パナマ文書の徹底調査等を求める声明

財源不足を理由に、年間3000億円から5000億円の社会保障費を削減する政府の方針(いわゆる骨太の方針2015)のもと、保育、医療、介護、年金、障害、生活保護等幅広い分野で、給付削減、自己負担増等が進められる中で、流失したパナマ文書を巡り、富裕層や大企業によるタックス・ヘイブン(租税回避地)を利用した税逃れへの批判が高まっている。

パナマ文書は、パナマの法律事務所モサック・フォンセカから流出した内部文書であり、1150万件にのぼる大量の文書やメールなどのデータからなる。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、この文書を入手し、分析し、同法律事務所が、これまで40年にわたって、ブリティッシュ・バージン・アイランド、パナマ、バハマなど21か国・地域で21万社ものペーパーカンパニーを設立し、各国首相クラスの政治家や富裕層等を顧客として、税逃れや財産隠しの手助けしてきた実態が暴露された。イギリスの市民団体タックス・ジャスティス・ネットワークの推計によれば、タックス・ヘイブンに秘匿されている資金量は、日本の国家予算の30倍の3000兆円規模に及ぶ。

パナマ文書には日本の約400の個人や企業の情報が含まれ、タックス・ヘイブンのケイマン諸島に日本企業が保有している投資残高は約65兆円に上るなど、日本においても、近年、富裕層や巨大企業がタックス・ヘイブンを利用し、巨額な税逃れが横行し、国家財政を脅かす深刻な事態となっている。

ところが、官房長官が政府としてパナマ文書を調査することは考えていないとコメントするなど、この問題に関する日本政府の動きは極めて鈍いと言わざるを得ない。専門家の指南を受けてタックス・ヘイブンを利用できる富裕層や大企業の税逃れを見逃し、庶民には厳しく課税して穴埋めをさせ、その上、財源がないとして社会保障を削減するのであれば、格差と貧困は拡大するばかりである。政府に対する信頼は一層損なわれ、人々は租税負担に抵抗し、税収は下がり、累積債務は増大こそすれ減少しない。パナマ文書問題をきっかけに、今こそ、税制を抜本的に見直し、信頼と合意に基づく公正な税制を再構築すべきである。

当連絡会は、昨年末に提言を公表し(https://tax-justice.com/?p=248)、「タックス・ヘイブンとの闘いと破綻した国際的な税のシステムの回復」が必要であることを強調したが、公正な税制により社会保障を充実させるため、国に対し、当面の対策として、次の施策の実施を求める。

1 政府は、パナマ文書の詳細を把握し、税逃れの疑いのある企業・個人に対する徹底した調査を実施し、適切な課税を行うこと

2 現在OECDによって進められている、金融情報の自動交換制度の創設や、多国籍企業に対する「国別報告書」の義務付けを推進し、その際、すべての国が例外なく参加することができるよう、各国間の協力を進め、また、市民の監視が届くよう、会社やトラストなどの真の所有者や「国別報告書」を公開すること

3 5月に予定されている伊勢志摩サミットの議長国として、タックス・ヘイブンをなくすための実効性のある包括的な国際的合意が実現できるよう、主導的役割を果たすこと

4 国際的な税のルールの策定に当たっては、OECDだけでなく、国連のもとに新しい組織を作るなど、すべての国が参加できる仕組みの実現をめざすこと

タックス・ヘイブンを利用した税逃れを許さないためには、世界の市民が、税の公正を求めて国際的に連帯することが重要であり、当連絡会も、各国市民との情報交換、相互交流等、世界の市民との連携に向けて力を尽くす決意である。

2016年(平成28年)4月27日

公正な税制を求める市民連絡会

代表 宇都宮 健児
同  山根 香織
同  菅井 義夫
同  雨宮 処凛

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