設立4周年記念集会『自己責任社会を変える財政を求めて ~少子高齢化社会からの問いかけ~』開催報告

公正な税制を求める市民連絡会 事務局次長・司法書士 水谷英二

2019年9月1日、東京・四ツ谷の主婦会館において、設立4周年記念集会を開催した。

税の財源をどこに求めるか、普遍主義、選別主義に焦点があてた過去の集会と趣向を変え、本集会においては、賃金問題と社会保障の関連に踏み込み、並行して税制を考える内容となった。司会は雨宮処凛さんと水谷。

恒例の当事者報告。全国保険医団体連合会事務局長の中重治さんは、医療現場でも自己責任論が蔓延し、医療、介護、年金の改悪状況を説明し、社会保障に回らない消費税増税は「国家的詐欺」と断罪した。

FREE(高等教育無法化プロジェクトメンバー)代表の岩崎詩都香さんは、多くの学生がバイトに追われて学業に専念できない実情があり、所得制限に関係なく無償化、給付型奨学金を支給する政策が必要と訴えた。

基調報告の後藤道夫さん(都留文科大学名誉教授)からは、全世代型社会保障の実現のためには、賃金を大幅に上げることが必要。低賃金のまま社会保障を設計するのは困難。賃金が上がらなければ税収は上がらない。国際比較の統計等により、教育費、社会保障分野全般について劣悪な状況を踏まえて強調された。

パネルディスカッションでは、竹信三恵子さん(和光大名誉教授・ジャーナリスト)から「格差拡大・階級社会が自己責任とされている現状を踏まえ、公的収入はどのように使われるべきか、どのような税制、財政が求められるのか」というテーマを設定して、各専門分野のパネリストから発言を求めた。

小野浩さん(きょうされん)からは、障がい者が犠牲となった「やまゆり学園事件」の発生要因として、劣悪な障害者入所施設の状況と本来充てるべきところにお金が回らない仕組みとなっていることを訴えた。

明石順平さん(弁護士)からは、残業代不払いが蔓延し、犯罪ともいえる状況に企業のペナルティが軽すぎる、国際比較の中で主要国で日本のみが1991年から2018年の名目賃金が下回っており、税収アップには、労働環境の改善が不可欠と強調された。

杉谷剛さん(東京新聞)からは、安倍政権の中で軍事費は聖域として支出が突出して急増しており、税が社会保障に回らない実態が国民に知られていない状況に警鐘を鳴らした。

宇都宮健児さんからは、上記パネラーの報告を受けて、低賃金で酷使されている労働問題や政治、税制に国民が関心を持ち、連携して運動していくことが必要との発言があった。

当市民連絡会事務局長・猪股正から、提言として「1、税と社会保障により人々の尊厳ある生の保障。2、自己責任を転換。3、保険主義偏重の是正。4、普遍主義の追求。5、ジェンダーの視点。」を強調し、今後、提言に基づき運動を継続する重要性を訴えた。

閉会の挨拶では、赤石千衣子さん(しんぐるまざあずふぉーらむ)から、ジェンダーの視点を税制に取り入れていく必要性を訴えた。

最後に、参加者から頂いた多数のアンケートでは、各専門分野からの充実した報告に高い評価を頂いた。貴重な報告を頂いた登壇者に敬意と感謝を込めて報告を終了したい。(了)

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