公正な税制を求める市民連絡会

広がる貧困と格差の是正に向けて

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私たちは、社会保障の充実を目指し、不公正税制の是正、所得再配分の強化、税制の透明化に向けた取り組みを進めるため、市民連絡会を設立し、この問題に関心のある多くの市民、団体の方々に参加を呼びかけています。

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ニュースレター Vol.8:ともに怒り、学び、求めよう


公正な税制を求める市民連絡会の会報の第8号(2017.4月号)です。
下記リンクをクリックするとPDFデータがダウンロードできます。ぜひご覧ください。

<内容>

  • ともに怒り、学び、求めよう
  • 誰もが抱える基礎的なニーズは税で満たせ-「社会保険主義」の罪-
  • 書籍紹介
  • やさしい税金Q&A:法人税について、私たち市民が知っておきたいことは?
  • 会員のひろば
  • 活動報告、開催予告

アップルの空飛ぶ魔術―失われた2000億円余の税収・連載第4回「『消された』子会社」

第4回 「消された」子会社

知的財産権をアイルランド子会社に移転し、そこに利益を集中したとしても、それだけではアメリカ政府の課税から逃れることはできません。

アメリカにはタックスヘイブン子会社への利益移転による課税逃れを規制するために、タックスヘイブン対策税制があります。一定の所得について、タックスヘイブン子会社に留保しても、本社に配当されたとみなして、本社の利益と合算してアメリカの税率で課税するというルールです。

前回述べたようにアップル社はアメリカ以外の国で得た利益を、アイルランド・セールス・インターナショナル(ASI)に集中しますが、ASIに集められた利益は、親会社のAOEを通じて、さらにその親会社のアップル・オペレーションズ・インターナショナル(AOI)に配当として集中します。

AOIはアップル社の海外子会社のほとんどを直接・間接に保有する持ち株会社で、ASIと同じく従業員ゼロのペーパーカンパニーです。重要事項はアメリカの本社の取締役会で決められるなど、本社の管理・支配下に置かれています。 したがって本来ならば、AOIに集中された利益は、タックスヘイブン対策税制によって、本社の利益に合算されて課税されることになります。

しかしここに登場するのが第2の魔法です。アメリカにはチェック・ザ・ボックス規制というルールがあり、申告の際に、ある子会社を課税対象である法人にするか、それとも他の法人の支店にするかの選択を認めています。支店にすることを選択すれば、その子会社間の取引は会社の内部取引とみなされ、取引がなかったものとみなされるのです。

アップル社はAOIの傘下のすべての子会社を、AOIの支店として扱うことを選択しており、その結果アメリカの課税当局からみれば、これらの子会社は存在しないことになり、子会社間の取引も消失してしまうのです。透明人間ならぬ透明企業になるのです。

チェック・ザ・ボックス規制はアメリカのタックスヘイブン対策税制の抜け穴であり、これを利用することによって、アップル社は本来なら本社の利益と合算して課税されるべきタックスヘイブン子会社の利益を、本社から見えなくし、課税を逃れているのです。

(公正な税制を求める市民連絡会幹事・合田寛)

アップルの空飛ぶ魔術―失われた2000億円余の税収・連載第3回「遥かなる旅へ」

第3回 遥かなる旅へ

アップルにとってはまず、本社のあるアメリカの高税率をいかにして避けるかが最大の課題となります。そのためにとられた方法が知的財産権(IP)の低税率国への移転です。

アイフォーンなどアップル製品の主たる価値は、その素材となっているアルミや鉄などの金属にあるのではなく、それを作り出すもととなったアイデァや設計などにあり、それらは主としてアメリカの本社(アップル・インク)が開発したものであり、知的財産権として所有されています。しかしその知的財産権を海外のオフショア子会社に移転すれば、それに結び付いた利益も移転することができます。

アップル社は本社で開発した知的財産権の一部を、アイルランド子会社(アイルランド・セールス・インターナショナル:ASI、およびその親会社アイルランド・オペレーションズ・ユアロップ:AOE)に移転したのです。本社のあるカリフォルニアから、アメリカ大陸を横断し、大西洋を越えるはるかなる旅の始まりです。

知的財産権の移転の方法にはいくつかの方法がありますが、アップル社は「コスト・シェアリング契約」によって行いました。コスト・シェアリング契約というのは、複数の当事者の間で研究開発費をあらかじめ分担しておき、その負担に応じてそこから生じた利益を分け合う契約のことです。

アップルの本社とASI、AOEの間のコスト・シェアリング契約の中心的内容は、アメリカの本社は知的財産の法的権利および南北アメリカでの販売権を持ち、アイルランド子会社(ASI)はそれ以外の国での販売権をもつというものです。

この契約によって、高税率のアメリカで課税される対象を、南北アメリカにおける販売収益に限定するともに、南北アメリカ以外から得られた販売収益を、低税率のアイルランド子会社(ASI)に集中することができたのです。これが魔法の第1です。

(公正な税制を求める市民連絡会幹事・合田寛)

アップルの空飛ぶ魔術―失われた2000億円余の税収・連載第2回「4つの魔法」

第2回 4つの魔法

アップルが税逃れ戦略で使っている魔法は、2013年のアメリカ上院の公聴会で、初めて詳細に解明されました。公聴会ではカール・レビン委員長を始め何人かの証人から、アップルの税逃れ戦略について、マジック(魔法)、ギミック(いかさま)などと、強い批判の言葉が飛びかいました。公聴会で明らかとなった驚くべきその魔法の正体は、大きく分けると次の4つの柱からなります。

  1.  アイフォーンなどアップル製品の製造販売にかかわる知的財産権をアメリカの本社からアイルランドのペーパーカンパニー子会社に移し、それによって大半の利益を実体のないアイルランド子会社に移したこと。
  2.  海外子会社の利益を本社の利益に合算するアメリカのタックスヘイブン対策税制を逃れるために、アイルランドに存在する子会社を、存在しないものとして扱うアメリカ税法のルールを使ったこと。
  3.  アイルランド子会社が中国で生産された製品を低価格で購入し、それを消費国に高価格で販売するいわゆる「移転価格」の方法によって、アイルランド子会社に利益を集中したこと。
  4.  アイルランド子会社はアイルランドで設立されているけれど、その管理・支配はアメリカの本社で行っており、アイルランド税法によって課税されない。一方アメリカの税法は会社の設立地がアメリカ以外であれば課税対象としない。この「居住地認定」の違いを利用して、世界のどの国からも課税されない「国籍なき企業」となったこと。

これらの4つの魔法を組み合わせることによって、アメリカ以外の国での販売収益をすべてアイルランド子会社に集中した上で、アイルランドからもアメリカからも課税されない、税の真空地帯を見つけ出したのです。公聴会のカール・レビン委員長はその発見の比類のない価値に注目し、アップルは「聖杯」を手にしたと述べています。

「聖杯(ホーリー・グレイル)」というのはイエス・キリストが「最後の晩餐」で、パンを裂き「私の体である」と言って弟子たちに与え、杯をとって「私の血である」と、弟子たちにその杯からワインを飲ませたという福音書の物語から来ています。それ以来今日まで、その「聖杯」の行方を求めるいろいろな伝説が生まれました。アップルの発見した税逃れの魔術は、幾世紀にもわたってどんなに探しても誰も見つけることができなかった「聖杯」に匹敵するものであったというのです。

(公正な税制を求める市民連絡会幹事・合田寛)

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