5月22日(日)の公正な税制を求める市民連絡会設立1周年記念集会の集会宣言です。
財源不足を理由に、教育、子育て、障害、医療、介護、年金、生活保護など社会保障のあらゆる分野で削減が進められつつあり、日本の財政は、社会保障の削減対象を探し、次はどこを削るかに力を注いでいます。
しかし、日本の貧困率は過去最悪であり、貧困は、子ども、若者、働く世代、高齢世代、すべての世代に広がり、中流層は減少し格差が拡大しています。税と社会保障による貧困削減効果をみても、日本の場合、OECD加盟国中最低の水準にあるばかりか、共働き世帯・単身世帯の貧困を逆に拡大させるという極めて不公正な状態にあります。今こそ、社会保障の削減をやめ、財政を再構築し、税と社会保障による所得再分配を機能させることによって、人々の生存と尊厳を守り、人々が相互に支え会う社会を構築すべきです。
本日の集会では、財政を再構築するにあたり、重要となるいくつかの視点が示されました。
財政は、人間の生存と尊厳を支えることにこそ存在意義があります。だからこそ、削減ありきではなく、人々のニーズを初めに考え、そのために求められる財源を人々が負担し合うという考え方(量出制入原則)に立ち返り、財政のあり方を考えていく必要があります。
税よりも社会保険料に大きく依存する保険主義的な社会保障のあり方の見直しも必要です。保険料の負担は低所得者の生活を困窮させるなど、保険主義は低所得者に重い負担を強いる逆進的な性質を有し、貧困と格差を拡大させる要因となっています。
低所得者のみに社会保障給付を集中する選別主義には、給付を受けられる人と受けられない人との間に分断や対立を生じさせ、給付を受けられない人が税の負担に抵抗するという問題があります。すべての人を対象とする無償の教育制度など、低所得者だけではなく、すべての人の基礎的ニーズを充たし、すべての人が受益感を持てる普遍主義的な制度への志向を強め、信頼と合意に基づく財政を構築すべきです。
パナマ文書により暴露された税逃れの問題も、税制の根幹に関わる極めて重要な問題です。国内で所得税や法人税の累進性を強化し、その立て直しを図ろうとしても、タックス・ヘイブン(租税回避地)がある限り、その効果は損なわれてしまいます。また、タックス・ヘイブンを利用できる一部の富裕層や大企業が巨額な税の負担を逃れ、庶民は消費税等の負担によりその穴埋めをするというあり方は不公正であり、庶民の税負担への抵抗は強まるばかりです。政府によるパナマ文書の徹底調査と実態解明、タックス・ヘイブン対策の強力な推進が必要です。
本日、イギリスのタックス・ジャスティス・ネットワークから、力強い連帯のメッセージが寄せられました。近く参議院選挙が予定されていますが、私たちは、国内はもちろん、国境を越えて世界の人々とも連帯し、税の理不尽な仕組と戦う固い決意が多くの市民の共通の意思であることを示し、民主主義の力で、社会保障を充実させ、富を分配させ、より公正な社会を築いていきましょう。
2016年(平成28年)5月22日
公正な税制を求める市民連絡会設立1周年記念集会 参加者一同