公正な税制を求める市民連絡会

広がる貧困と格差の是正に向けて

声明

大企業による租税回避防止のため「過大支払利子税制」の抜本的強化を求める声明

現在、タックス・ヘイブン対策の重要な柱の一つである「過大支払利子税制」の強化が検討されているが、これに反対する政財界の動きがある。

「過大支払利子税制」とは、企業が、国外の関連企業等に対して過大な利子を支払って損金に算入し、それによって所得を圧縮して租税を回避することを防止するため、過大と認められる利子部分を損金不算入とする制度である。

OECDは、2015年、15の行動計画からなるBEPSプロジェクトを公表した。BEPS(税源浸食と利益移転)とは「税のルールに含まれるギャップやミスマッチを利用することによって、低税率国や無税国に意図的に利益を移し、税を逃れる戦略」のことである。現在、「BEPS包摂的枠組み(Inclusive framework on BEPS)」のもとで、途上国を含め100か国以上の国が参加し、15の行動計画に沿って国内法を改正する国際的な取組が進められており、日本も参加国の一つである。そして、「過大支払利子税制」については、BEPSプロジェクト4が、企業の支払利子の損金算入を調整所得の10%~30%に制限する、利子控除制限制度の強化を勧告し、諸外国は対応を進めている。

これを受けて、日本においても、「過大支払利子税制」の強化が検討されており、昨年の政府税制調査会においても、50%を超える部分のみ損金不算入とする現行制度を、BEPSプロジェクトの勧告に足並みを合わせ、10~30%に制限することが提案されている。

ところが、これに対し、日本経団連など経済界は、一斉に「金融市場に影響する」などとして慎重な対応を求め、金融庁や経済産業省も、反対の姿勢を示している。

しかし、利子支払いの形でタックス・ヘイブンを利用できる大企業の税逃れは見逃し、市民に対しては消費税率の引き上げ等によって課税を強化するというあり方は、不公正であり、税制への信頼を一層失わせ、市民の租税負担への抵抗を強めるばかりである。税収の流失を止め安定した社会保障財源を確保するため、実効的なタックス・ヘイブン対策が必要不可欠である。また、これまで、BEPSプロジェクトの推進に主導的役割を果たしてきた日本は、国内において、自ら率先して勧告の内容を実現していくべきである。

当連絡会は、企業の支払利子の損金算入限度について、BEPSプロジェクトの勧告に沿って10~30%に制限する改正を速やかに行うとともに、企業による租税回避の実態調査を進め、その結果を踏まえて10%以下にまで制限する必要性も検討するなど、「過大支払利子税制」を抜本的に強化することを求めるものである。

 

2018年(平成30年)12月11日

公正な税制を求める市民連絡会

代 表  宇都宮 健 児

   同    山 根 香 織

同    菅 井 義 夫

同    雨 宮 処 凛

公正な税制を求める市民連絡会設立1周年記念集会・集会宣言

5月22日(日)の公正な税制を求める市民連絡会設立1周年記念集会の集会宣言です。

財源不足を理由に、教育、子育て、障害、医療、介護、年金、生活保護など社会保障のあらゆる分野で削減が進められつつあり、日本の財政は、社会保障の削減対象を探し、次はどこを削るかに力を注いでいます。

しかし、日本の貧困率は過去最悪であり、貧困は、子ども、若者、働く世代、高齢世代、すべての世代に広がり、中流層は減少し格差が拡大しています。税と社会保障による貧困削減効果をみても、日本の場合、OECD加盟国中最低の水準にあるばかりか、共働き世帯・単身世帯の貧困を逆に拡大させるという極めて不公正な状態にあります。今こそ、社会保障の削減をやめ、財政を再構築し、税と社会保障による所得再分配を機能させることによって、人々の生存と尊厳を守り、人々が相互に支え会う社会を構築すべきです。

本日の集会では、財政を再構築するにあたり、重要となるいくつかの視点が示されました。

財政は、人間の生存と尊厳を支えることにこそ存在意義があります。だからこそ、削減ありきではなく、人々のニーズを初めに考え、そのために求められる財源を人々が負担し合うという考え方(量出制入原則)に立ち返り、財政のあり方を考えていく必要があります。

税よりも社会保険料に大きく依存する保険主義的な社会保障のあり方の見直しも必要です。保険料の負担は低所得者の生活を困窮させるなど、保険主義は低所得者に重い負担を強いる逆進的な性質を有し、貧困と格差を拡大させる要因となっています。

低所得者のみに社会保障給付を集中する選別主義には、給付を受けられる人と受けられない人との間に分断や対立を生じさせ、給付を受けられない人が税の負担に抵抗するという問題があります。すべての人を対象とする無償の教育制度など、低所得者だけではなく、すべての人の基礎的ニーズを充たし、すべての人が受益感を持てる普遍主義的な制度への志向を強め、信頼と合意に基づく財政を構築すべきです。

パナマ文書により暴露された税逃れの問題も、税制の根幹に関わる極めて重要な問題です。国内で所得税や法人税の累進性を強化し、その立て直しを図ろうとしても、タックス・ヘイブン(租税回避地)がある限り、その効果は損なわれてしまいます。また、タックス・ヘイブンを利用できる一部の富裕層や大企業が巨額な税の負担を逃れ、庶民は消費税等の負担によりその穴埋めをするというあり方は不公正であり、庶民の税負担への抵抗は強まるばかりです。政府によるパナマ文書の徹底調査と実態解明、タックス・ヘイブン対策の強力な推進が必要です。

本日、イギリスのタックス・ジャスティス・ネットワークから、力強い連帯のメッセージが寄せられました。近く参議院選挙が予定されていますが、私たちは、国内はもちろん、国境を越えて世界の人々とも連帯し、税の理不尽な仕組と戦う固い決意が多くの市民の共通の意思であることを示し、民主主義の力で、社会保障を充実させ、富を分配させ、より公正な社会を築いていきましょう。

2016年(平成28年)5月22日

公正な税制を求める市民連絡会設立1周年記念集会 参加者一同

パナマ文書の徹底調査等を求める声明

財源不足を理由に、年間3000億円から5000億円の社会保障費を削減する政府の方針(いわゆる骨太の方針2015)のもと、保育、医療、介護、年金、障害、生活保護等幅広い分野で、給付削減、自己負担増等が進められる中で、流失したパナマ文書を巡り、富裕層や大企業によるタックス・ヘイブン(租税回避地)を利用した税逃れへの批判が高まっている。

パナマ文書は、パナマの法律事務所モサック・フォンセカから流出した内部文書であり、1150万件にのぼる大量の文書やメールなどのデータからなる。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、この文書を入手し、分析し、同法律事務所が、これまで40年にわたって、ブリティッシュ・バージン・アイランド、パナマ、バハマなど21か国・地域で21万社ものペーパーカンパニーを設立し、各国首相クラスの政治家や富裕層等を顧客として、税逃れや財産隠しの手助けしてきた実態が暴露された。イギリスの市民団体タックス・ジャスティス・ネットワークの推計によれば、タックス・ヘイブンに秘匿されている資金量は、日本の国家予算の30倍の3000兆円規模に及ぶ。

パナマ文書には日本の約400の個人や企業の情報が含まれ、タックス・ヘイブンのケイマン諸島に日本企業が保有している投資残高は約65兆円に上るなど、日本においても、近年、富裕層や巨大企業がタックス・ヘイブンを利用し、巨額な税逃れが横行し、国家財政を脅かす深刻な事態となっている。

ところが、官房長官が政府としてパナマ文書を調査することは考えていないとコメントするなど、この問題に関する日本政府の動きは極めて鈍いと言わざるを得ない。専門家の指南を受けてタックス・ヘイブンを利用できる富裕層や大企業の税逃れを見逃し、庶民には厳しく課税して穴埋めをさせ、その上、財源がないとして社会保障を削減するのであれば、格差と貧困は拡大するばかりである。政府に対する信頼は一層損なわれ、人々は租税負担に抵抗し、税収は下がり、累積債務は増大こそすれ減少しない。パナマ文書問題をきっかけに、今こそ、税制を抜本的に見直し、信頼と合意に基づく公正な税制を再構築すべきである。

当連絡会は、昨年末に提言を公表し(http://tax-justice.com/?p=248)、「タックス・ヘイブンとの闘いと破綻した国際的な税のシステムの回復」が必要であることを強調したが、公正な税制により社会保障を充実させるため、国に対し、当面の対策として、次の施策の実施を求める。

1 政府は、パナマ文書の詳細を把握し、税逃れの疑いのある企業・個人に対する徹底した調査を実施し、適切な課税を行うこと

2 現在OECDによって進められている、金融情報の自動交換制度の創設や、多国籍企業に対する「国別報告書」の義務付けを推進し、その際、すべての国が例外なく参加することができるよう、各国間の協力を進め、また、市民の監視が届くよう、会社やトラストなどの真の所有者や「国別報告書」を公開すること

3 5月に予定されている伊勢志摩サミットの議長国として、タックス・ヘイブンをなくすための実効性のある包括的な国際的合意が実現できるよう、主導的役割を果たすこと

4 国際的な税のルールの策定に当たっては、OECDだけでなく、国連のもとに新しい組織を作るなど、すべての国が参加できる仕組みの実現をめざすこと

タックス・ヘイブンを利用した税逃れを許さないためには、世界の市民が、税の公正を求めて国際的に連帯することが重要であり、当連絡会も、各国市民との情報交換、相互交流等、世界の市民との連携に向けて力を尽くす決意である。

2016年(平成28年)4月27日

公正な税制を求める市民連絡会

代表 宇都宮 健児
同  山根 香織
同  菅井 義夫
同  雨宮 処凛