「インボイス制度導入に関する質問書」 公正な税制を求める市民連絡会

公正な税制を求める市民連絡会は、政府に対し、2022年8月8日、衆議院第2議員会館内にて、「インボイス制度に関する質問書」を提出しました。内容は以下のとおりです。

「インボイス制度導入に関する質問書」

 私たち公正な税制を求める市民連絡会は、公正な税制により社会保障を充実させ、貧困と格差を是正することを目的として、2015年5月に設立された市民団体です。
さて、2023年10月1日からインボイス制度の導入が予定されていますが、現状では、納税者の多くが、インボイス制度を理解しておらず、納得もしているとは到底言えない状況にあると言わざるを得ません。私たちは、このままインボイス制度がスタートすることを強く危惧しています。
そこで、納税者が理解し納得できる税制を実現していくため、インボイス制度に関する以下の疑問点にお答えいただきたく、申入れさせていただく次第です。

1 導入時期について
物価高騰とコロナ禍が同時進行している状況下において、小規模・零細事業者に対しては特段の配慮が求められていると思います。このまま、来年10月という時期に、インボイス制度を導入することに問題はないでしょうか。また、来年10月に導入すべき積極的理由があれば教えてください。

2 小規模・零細事業者が不利益を被る可能性と対応策について
2022年1月19日、関係各省庁より「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」が発出され、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者と取引を行う事業者が、その取引条件を見直す場合に、優越的地位の濫用として問題となるおそれがある行為類型と考え方が示されました。これにより、インボイス制度の実施を契機とした優越的地位の濫用については一定の歯止めがかけられる可能性があります。
しかし、公正取引委員会が独禁法違反で措置を行ったのは5年間でわずか5件にとどまり実効性を期待できない だけでなく、独禁法上問題になるような優越的地位の濫用はなくとも、インボイス制度導入を期に小規模・零細事業者が取引から排除されるなどの不利益を被る(例えば、インボイス制度の実施により課税事業者となり、税込価格の値上げをせざるを得なくなった事業者が、競合他社との料金比較によって、取引先から値引きを要請され、応じなければ取引から排除されるなど)可能性がありますが、こうした不利益に対する対策が講じられていないのではないかという懸念があります。
小規模・零細事業者が事実上値引きを強いられたり、市場から排除される可能性については、どのように考えていますか。また、このような場合に、小規模・零細事業者の不利益を回避するための対応策については、どのように考えていますか?

3 税負担の水平的公平性の毀損と対応策について
インボイス制度が導入されても、対消費者取引を行う免税事業者は免税事業者を維持する可能性が高く、事業者免税点制度の公平性が保たれないという問題が生じると思われます 。また給与所得者と個人請負型就業者の間においても、インボイスの導入によって平均実効税率において約4.5%不利になることも明らかになっています 。
このようにインボイス制度は、取引形態や就労形態によって税負担の公平性を毀損するおそれがあり、税制の水平的公平性の観点から問題はないでしょうか。また、このような問題点について、是正措置を検討されているのであれば、その内容を明らかにしてください。

4 簡易課税制度の事後的適用による救済措置の導入等について
2021年11月10日に発表された日本商工会議所の調査結果では、約6割の事業者がインボイス制度の導入に向けて特段の準備を行っていないとされ、またインボイス制度導入に向けた課題として「そもそも制度が複雑でよく分からない」という回答が4割超を占めています 。
簡易課税制度の事前届出などの諸制度を知らないままインボイス登録をしてしまった場合、業種によっては極めて多額の納税をしなくてはならなくなり、果ては納税者の生活そのものが脅かされる恐れがあります。
こうした事態を避けるため、インボイス制度の導入にあたっては、①確定申告時に、簡易課税制度の選択適用を認めること、②簡易課税制度の2年縛りのルールを撤廃するとなどの措置が考えられます が、このような簡易課税制度の事後的適用による救済措置を導入する予定はありますか。別の救済策を検討しているのであれば、その内容を明らかにしてください。

5 帳簿作成の事務負担と対応策について
インボイス制度の導入後は、帳簿を作成するにあたって、請求書等証憑の1枚1枚について「購入した商品・サービスが、標準税率か、軽減税率か」を確認するだけでなく、「登録番号の記載の有無」をも確認し、ない場合は「経過措置の適用を受ける」旨についても帳簿に記載しなければならなくなります。
このように、インボイス制度の導入により、帳簿作成にあたって従来よりも極めて複雑となり、膨大な時間を要することになり、また税理士等に帳簿作成を外注するにしても、相応の費用が掛かることになります。
インボイス制度の導入によって、過重な事務負担を生じさせるという問題点はないでしょうか。帳簿作成の事務負担の軽減のために、どのような措置を検討していますか。

6 個人情報の保護について
国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトでは、登録番号を入力すると、法人の場合は「法人名および本店又は主たる事務所の所在地」が、個人事業者の場合は「本名」が公表されます。
個人情報である本名の公表を望まない個人事業者も少なくなく、「本名」が、請求書に記載された住所や電話番号などの他の情報とともにSNSで拡散される恐れもあります 。
インボイス制度の導入によるプライバシー侵害の危険性について、どのように考えていますか。個人情報保護のため、どのような対応を考えていますか。

以上

シェアよろしくお願いいたします。!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次