アップルの空飛ぶ魔術―失われた2000億円余の税収・連載第8回 多国籍企業の「税金天国」日本

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第8回 多国籍企業の「税金天国」日本

「アップルの空飛ぶ魔術」の連載は7回で終わる予定でしたが、タックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)がこのほど公表した、多国籍企業による利益移転によってもたらされた世界の税収損失の総額とその国別内訳について紹介し、その意味について考えてみましょう。

多国籍企業によるタックスヘイブンへの利益移転によって生じた税収の損失については、これまでも多くの専門家や機関によって試みられてきました。数年前に公表されたIMFの研究者による試算は、多国籍企業の税逃れによる税収損失の総額を6000億㌦(約66兆円)としていました。

今回のTJNの試算は、多国籍企業の税逃れによる税収損失を、その総額だけではなく、国別の内訳を試算したことに、その大きな意義があります。

この試算によれば、税収損失の総額は5000億㌦(約55兆円)と、IMFの試算と比べて控えめとなっています。国別内訳をみれば、金額では先進国の方が大きいのですが、GDPや総税収に対する比率でみると、途上国、とりわけ貧困国で大きいという結果となっています。

とりわけ注目すべきことは、日本からの税収損失が468億㌦(約5.1兆円)となっており、アメリカ(1888億㌦)、中国(668億㌦)に次いで、世界で3番目に多額の税収を奪われている国になっていることです。

アメリカの税収損失が最も多いといっても、その原因を作っているのは、主としてアメリカの多国籍企業なので、他国が口を挟む筋合いのものではないかもしれません。しかし、日本が外国の多国籍企業によって、世界で3番目に多い5兆円を上回る税収を奪われている事実は、無視することはできません。

この連載の前号(第7回)で、アップル社一社だけでも、日本は2000億円を上回る税収を奪われていることから、グーグル、アマゾンなど日本で活動する多国籍企業の税逃れの全体規模は「毎年数兆円を下回ることはないでしょう」と述べましたが、TJNの今回の試算結果は私の想定を超えるものです。

しかもこれは多国籍企業の税逃れによる税収損失の試算です。タックスヘイブンによる税収損失は、多国籍企業によるものだけではありません。これに加えて、個人の富裕者の税逃れによる税収損失があります。

世界でも最も深刻な公的債務を抱える日本にとって、多国籍企業の税逃れによる税収損失を取り戻すことは最重要課題です。

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